グローバル人材活用のための育成

horiguchi daijob.com2012年、産業能率大学 経営管理研究所が行った調査によると「グローバルリーダー」が現状不足している企業が77.7%、「グローバルマネージャー」が現状不足している企業が80.8%となっている。
2008年のいわゆる”リーマンショック”以降、日系企業のグローバル化は大手に限らず、中堅、中小、ベンチャー企業においても重要課題のひとつとなり、 必然的にグローバルに活躍出来る『グローバル人材』の確保・育成は、グローバル戦略上の重要課題となっている。
昨今では語学力を採用基準に設ける企業が増加しているが、従業員のTOEIC平均スコアが100点アップしたら、その会社はグローバル企業なのかと聞かれれば、ほとんどの方がNOだと言うだろう。そのような企業のグローバル化の共通認識自体がほとんどの方に浸透しているという点では、数年前に比べるとグローバル化への意識は高まっている。
バイリンガル転職サイトの運営経験から見ると、現状は中堅・中小企業を中心とした多くの日系企業のグローバル人材の『活用』は、『グローバル採用』が重要課題として認識されている今でも、遅れていると感じることが多い。

現状の『グローバル人材』の定義を整理してみると下記のような要素が挙げられる。
1、母国語以外の語学力・コミュニケーション能力がある人材
2、視野が広く、主体性・積極性、協調性・柔軟性、責任感がある人材
3、自身のアイデンティティーを持ちつつ異文化に対する理解・尊重出来る人材

当たり前のことだが、上記の要素があるだけで『グローバル人材』として活躍出来るとは限らない。
あらゆる国の企業が自国を含めたグローバル市場において、それぞれの国に適したサービス展開を図り、シェアの獲得に本腰を入れている中で、国境を超えてのマーケット戦略を十分に理解し、自身や自社の強みを活かしたグローバル展開の実行が出来る人材の活躍こそが、求められている『グローバル化』だろう。

つまり、『グローバル採用』とはグローバル人材の要素を持つ人材の採用だけではなく、帰属する企業そのものの『グローバル戦略』、言い換えると『グローバル要素を持つ人材がグローバル人材として活躍出来る環境が作られているか』が重要だと言える。上記要素を持った人材ばかりをいくら採用しても、その能力を発揮させる事が出来なければ、企業のグローバル化は進まない。
例えば、これまで日本で成長してきた企業が、今後日本での大幅な需要拡大が見込めない場合、中国での展開を考えたとする。
この場合、どのような人材が必要になってくるか。

日系企業の場合、多くの企業がまずは中国語の堪能な日本人、そして次に日本語が堪能な中国人の採用を行い、 既存のプロジェクトチームに加え、グローバル戦略を行っていくケースが多い。
ところが、外資系企業の場合、多くの場合、直近で中国進出を成功させた実績を持つ人を採用し、その人材を中心にグローバル戦略のプロジェクトがスタートさせることが多い。
これらの採用の大きな違いは、グローバル戦略をどのように考えているか、(グローバル人材が活躍しやすい環境をどう考えているか)、というポイントに大きく関わる。
日系企業の場合、日本で日本人マーケットを相手に戦略してきた人材が中心にグローバル戦略を行い、外資系企業の場合、展開をしようと考えているマーケットに一番詳しい人材が中心となりグローバル戦略を行う。
一概に日系企業で多く見られるケースが悪く、外資系企業のようなケースを良いと評価するわけではない。 日系企業、外資企業を問わず、グローバル戦略を実行するにあたり、最も適したグローバル人材の活用というのはグローバル戦略上の最初の競争となっているという危機感を持つことが、特に日系企業の場合では重要なのではないか。

グローバル市場で活躍していると言われる人材の活用に成功している日系企業は少ないのではないかと感じられることが多い。多くの日系企業では新卒採用のグローバル化は進み、日本人の留学経験者や外国人留学生などの採用にも積極的な企業が増えており、その勢いは中小企業にも拡がりを見せているが、それらグローバル人材としての要素を多く持つ人材が入社しても、その育成方法や、活用においては、『グローバル人材』の『活用のための育成』ではなく、『従来どおりの日系企業に適した育成』が行なわれ、『日本人のような外国人』や『通訳・翻訳担当』のような人材のほうが分かりやすく、理解されやすいなど、問題点が多く残されているのが現状である。

これほど多くの日系企業が海外となんらかのビジネスを展開していながら、経営全般を行う企業幹部にグローバル戦略に長けた外国人がいる日系企業はまだごく僅かであり、せっかく採用した留学生のキャリアプランや、在籍している外国人社員の雇用制度、キャリアプランに関してもまだまだ不明確ということが多く見られる。
企業がグローバル化するということは、グローバル人材を採用し、『活用』するための準備を整えなければ、グローバル化しているとは言えないのである。
今までの日系企業の価値観からすると留学経験のある日本人は礼儀を知らない、外国人は残業をしない、決められたことしかやらないなどの評価がある一方で、目標に対する執着や、ポジティブ思考、自分の意見をしっかりと伝えられるなど良い評価もある。 それぞれの国の国民性や育った環境によって、仕事に対するカルチャーやモノの考え方が違うことが多々ある。またそれぞれの人が独自のカルチャーを持つように、企業に関しても日系企業、外資系企業ともに独自のカルチャーがあり、何が正しいかというものではない。

もうすでに日系企業は育成中心の新卒採用、外資系企業は即戦力重視の中途採用の時代ではない。
ましてや、グローバル化とは、TOEICの点数や、グローバルスタンダードを目指すモノのではない。

企業の良いアイデンティティーやカルチャーは教育において十分理解させ、また優れた他国のカルチャーは吸収すれば良い。現状の雇用基準や社風に合わせた採用ではなく、それぞれの人材が持つ思考やカルチャーを受け入れ、人材の良さを最大限に活かせる新たな採用・育成・雇用の基準作りが日系企業、外資系企業ともに新しいグローバル採用戦略として必要なのである。
多種多様な価値観を尊重し、受け入れて行くことは、決して簡単なことではないが不可能ではないはずだ。
まずはグローバルにも通用する企業のアイデンティティー作りに取り組んで、それを理解し、尊重し、受け入れあえる『グローバル人材』の採用、そして『活用のための育成』に取り組んで欲しい。

参考資料:2012年4月 学校法人産業能率大学 経営管理研究所 「グローバル人材の育成と活用に関する実態調査」プロジェクト
「グローバル人材の育成と活用に関する実態調査」最終報告書

◇プロフィール
堀口 敏秀 (Toshihide Horiguchi)
ヒューマンインターナショナル株式会社 エグゼクティブオフィサー  グローバル求人サイト事業責任者
人材採用の専門家として12年以上の経験を有し、採用の企画戦略、人材育成分野を中心に 多数の企業の採用コンサルティングを担当。現在はグローバル人材に特化した転職サイト『Daijob.com』の責任者として、外資系企業・日系企業問わず、グローバル人材の採用企画に携わっている。

www.Daijob.com ”国内最大級のバイリンガル・国際派のための求人情報サイト”
1998年にバイリンガルを対象とした日本で唯一の求人サイトとしてサービス開始以来、日本で最大級の規模を誇るバイリンガルのための転職・求人情報サイト。外資系企業や国際的な日本企業の求人情報を常時約 10,000 件以上掲載。今では累計約39 万人以上のバイリンガル人材が登録し、月間ページビュー 300 万pvを超える、バイリンガル求職者にとって欠かせない転職ツールとして活用されています。

This page is also available in: English

Globalinx Corp