特別寄稿 企業文化と刑事責任

特別寄稿「企業文化と刑事責任」

企業の運営と人材のグローバル化は、いくつかの問題を考える必要があります。その問題の1つは会社の価値観や文化が、グローバルな企業行動の基準と一致しているかどうかということです。

これについて、私の仕事で、時々次のような問題に遭遇します。企業文化は、企業の刑事責任の原因となり得るか?答えは「はい、そして、ますますそのようになってきています」です。 多くの国が刑事責任の範囲を広げ刑法を強化し、企業の刑事責任をその範囲に含めるようになりました。オーストラリアとスペインはその2つの事例です。学界は、企業の行為が国際刑事裁判所の管轄であるべきであるかどうかを議論しています。それと関連して、国際連合人権理事会は、企業には人権を尊重する責任があると主張します。これらは、別々の異なった事象として判断されるべきではありません。むしろ、これらは企業行動を判断する一連の基準を反映しています。

企業文化は、企業責任を判断する要因の1つになってきています。伝統的に、企業の行為に対して刑事責任を問うことは困難でした。刑事責任には、通常、犯罪行為と犯行意図の両方が必要です。個人は犯行意図を持って行動することが可能です。しかし、何千人という個人の集合体である企業は、犯行意図を持って行動することが可能でしょうか。過去に、企業は、従業員の犯罪行為はその個人の犯行意図を反映しているもので、企業の犯行意図を反映しているものではないと主張しました。その結果、従業員は刑務所に入って、会社はそうではありませんでした。現在では、企業文化が従業員の犯罪行為を奨励し、容認しているという反論が出てきました。従業員はまだ刑務所に行きますが、企業も罰せられます。しかし、企業の刑事責任のこの傾向は、単に新たな法的議論の結果ではありません。むしろ、それは企業と社会の関係の性質の変化を反映しています。

企業がグローバル化して、事業範囲が拡大し、より多くの資源を消費し、そして、社会に大きな影響を持つようになりました。伝統的に社会の代表である政府は、国境を越えた企業の行動に対し反応することが困難です。当面の間、社会は人口増加、移民、資源の枯渇、環境悪化などによって悪化させられた数々の問題に苦しみ続けます。その結果、企業と社会の関係の不均衡や、グローバル化が社会を損ない企業に不当に恩恵を与えているという認識が生まれました。この不均衡と認識により、社会が企業行動を精査し、企業の責任の範囲を拡大させる方策を探るようになりました。ますます、企業文化は、精査と責任をその一部としつつあります。企業がこの傾向を理解し、対応する必要があることは明白です。企業は、他人が誤解しないように、また、悪意を持って解釈しないように、その価値観や文化を定義すべきです。企業は多様な企業システムを通して一貫した価値観と文化を備えるべきです。企業は組織のすべての階層の従業員に対し、価値観や文化に適合するために必要な能力を提供するべきです。

経営陣は、グローバル企業の行動規範を認識する必要があります。これらの基準を満たす際に、企業の価値観や文化の役割を理解する必要があります。経営陣は、企業の価値観と文化を正確に、そして、信頼できるように伝えるスキルを持つ必要があります。理想的には、コミュニケーションが他の人を鼓舞し、好意を抱かせるものである必要があります。さらに、経営陣は、企業システムが企業の価値観や文化を強化するものであることを保証すべきです。管理職は、企業システム下で日常のコミュニケーションを通して、この価値観を適用するのに必要なスキルと自信を持つべきです。

管理職は、価値観を適用することが困難であることを認識すると同時に、これらの困難を克服するための戦略を認識するべきです。従業員は、これらの価値観と文化がどのように会社の未来と成功に結びついているか理解する必要があります。マネジメントがこれらの価値観を追求することにコミットしていると信じることが大切です。

従業員は、価値観と一致する行為と一致しない行為を区別するべきです。従業員には、自己の行為を管理するツールや価値観と矛盾する行為を表現するツールを提供することが大切です。悲しいことに、多くの企業の対応が不十分で逆効果です。企業は一般的に価値観を定義し明示しますが、これらの価値観は、しばしば1つの部門で定義されたものであり、他の部門では無視されるものです。企業文化は経営者によってもたらされるものではなく、現場で経営者が許容している行為の集大成というべきものです。

企業は未だに、管理者が多様な人材を管理するために異文化研修に過度に依存しています。このトレーニングは、多くの場合価値観の普及と共有を損なう”我々対彼ら”の考え方につながります。この考え方はまた、文化に基づいたステレオタイプ(人種や国籍)につながります。こうしたステレオタイプは、違法な差別と人権侵害を起こすことが多くあります。外部から見ると、こうした差別や人権侵害につながるステレオタイプは、企業文化によって助長され許容されたものとみなされるかもしれません。グローバルな企業が企業文化を管理することは困難を伴う作業です。それでも、企業のグローバル化には必須の要素です。そして、それは今後数年間でさらに精査の対象となるでしょう。

※カーティス・ヘロンは企業のグローバル化を推進するトレーニングやサービスを提供するカリフォルニア州の公認弁護士です。

カーテイス・ヘロン(米国弁護士)

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