日本人はなぜ頑張るのか-その歴史・民族性・人間関 係

日本人はなぜ頑張るのか-その歴史・民族性・人間関 係
天沼 香 著 第三書館 2004年

日本人であれば、ビジネスの場であれ、教育の場であれ、コミュニ ティの場であれ、「頑張る」や「頑張れ」やその応用形を毎日耳にし、 自ら使っています。それほど、「頑張る」や「頑張れ」という表現は、 日本語コミュニケーションにおいては空気のような存在で、ほとんど 無意識に口にし耳にしています。
 実は、著者は1987年にも『「頑張り」の構造-日本人の行動原理』を上梓し、学界のみならず、多方面に波紋を投げかけました。そ の著者が、再び同じテーマで本書を著そうとしたのは、「頑張り」「頑 張れ」について考察を深め、これらの言葉を通して、日本人の性向や人 間関係を考え直し、これからの日本人そして日本社会のあり方、さらに は他民族との付き合い方を考えようとしたためです。
 著者は、「頑張り」や「頑張る」が、日本人の行動や思考さらには人 間関係に大きな関わりを持っていて、日本人のコア・パーソナリティー であると言います。本書では、これらの言葉の淵源から今日に至る歴史、 「頑張り」の動機や理由、「頑張り」のタイプ、それを育む社会、その 問題点などが取り上げられています。
 『「頑張り」の構造-日本人の行動原理』が出版された頃(1987年) までは、「頑張り」はプラスの評価の方が多かったようですが、1990年 代前半以降その評価がマイナスに転じ、21世紀に入った後も、その動向 は続いています。その背景には、「頑張りが過ぎると、広く周囲を見渡 すことができなくなり、自己中心的になり、他者を顧みることができな くなる」ことへの反省が込められているのかもしれません。これに関し 著者は、主体性を欠落させた「頑張り」は、これからの日本を見据えよ うとするときに、大いに考え直さなければならない、と説きます。すな わち、これから求められる「頑張り」には「主体性」がキーになるとい うことです。主体的な頑張りの一つに、時には「がんばらない」志向と いう選択肢もあるということが印象的です。
 多民族との付き合いを考えるとき、 <ソトなる他者>に対して発現す る「負けるものか」といった意識のもとでの「頑張り」は、プラスとマ イナスの二面性があるということを肝に銘じておく必要があるというこ とを教えられる一冊です。

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