多文化世界

多文化世界
青木 保 著、岩波書店、2003年

文化人類学者の著者は、これまでに「文化」に関連する多数の著書や論 文を著してきています。その著者が、9・11同時多発テロ以降の世界 を受け、今世紀に求められるパラダイムについて語ったのが本書です。
 「グローバル化」については各方面から緒論が展開されていますが、 本書の著者は、グローバル化を「世界を同じシステムに統合しようとす る動き」と捉え、そのグローバル化の流れの中で明らかになってきたこ とは、「文化の多様性」の認識であると言います。また、グローバル化 が進めば進むほど、文化の違い、価値の違い、生き方の違い、それぞれ が目標とするものの違いが明らかになってきていると言及します。

 「多文化世界」とは、単に世界にはいろいろな文化があって、それが 重要だという文化相対的な見方をするのではなく、それぞれの文化が、 文化度を高める努力を重ねることによって、一つのグローバルな世界を 構築していく意志の表れとなる世界が、「多文化世界」であると著者は 考えます。そして、そのことをはっきりと意識し、「協調と説得」を粘 り強く行うことが、今日の国家・社会・個人に求められることと、著者 は満身の力を込めて説きます。
 本書は新書の体裁ですが、その内容はズッシリと重く、各領域に身を 置く私たちに、真の相互理解や協調とは何か、そしてその可能性や実現 性を深く考えさせられる一冊です。

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